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【オークマン 24年1月号】岡本幸一郎の思い出の車列伝




走りの"味"にこだわる

生粋のFRスポーツ

●トヨタ 86


同じ工場で生産される兄弟車とも、走りの味付けが異なる「86」。

その突き詰めたこだわりに、モータージャーナリストが迫ります。

Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)


ドリフトの360 グリップのBRZ


 「86」という車名の由来は、「ハチロク」の愛称で親しまれるAE86型カローラレビン/スプリンタートレノのように、お客様に愛され、育てていただきたいという想いから命名されたという。

 手ごろな価格とサイズとパワーでFRの2ドアクーペとなれば、時代は変わっても、積極的に走りを楽しみたい層が放っておくはずがない。

 スバルのBRZとともに登場した2012年というと、日本のスポーツカーがかなり寂しい状況だった時代。 そんな中に現れた両車は一筋の光明だった。

 両車が生まれた背景は、トヨタにとっては、売れるクルマを優先する経営上の戦略により長らくスポーツカーらしいスポーツカーを作ってこなかったが、若い人にクルマ離れさせないための身近なスポーツカーを出すべきという声が社内に少なからずあったことを受け、何かことを起こす必要に迫られていた。

 かたやスバルにとっては、それまで手掛けたことのないFRのライトウエートスポーツにチャレンジしたいという思いはずっとあった。

 そうしたすでに提携関係にあったトヨタとスバルの思惑が一致したことから、両社によるプロジェクトがスタートし、共同開発により誕生したのが、86とBRZだ。生産はいずれもスバルの群馬工場で行われている。

 実は当初、どちらもBRZと共通の走りで発売される予定だったところ、トヨタ側がもっとFRらしい走りを求めたため、ドタンバで差別化が図られた。その結果、ハンドリングは「ドリフトの86、グリップのBRZ」と評されるほど両極端になった。

 ところがその後、毎年のようにアップデートして走りも改良されていくうちに、別物だった走りがお互い歩み寄ってどんどん似ていき、最終型ではほとんど同じようになった。


目指すべき”味”のために似ていた走りを再び差別化


 スポーツ/スペシャルティ市場が低迷していた中でも、両車はそこそこ順調な売れ行きを見せてきた。2021年にモデルチェンジを実施し、プラットフォームをキャリーオーバーしつつ、エンジンを2.4Lとするなど全体的に仕様向上が図られた。走りについて、 それまで熟成させてきて、お互い良いものができたという共通認識があったため、当初はその流れのまま前述のような近い味付けで開発が進められていた。

 ところが、発売の半年前ごろに方針が一転し、GR86はよりGRらしい“味”を実現するため、BRZに対してできる限り作り分けるはこびとなった。 これにはマスタードライバーであ豊田章男現会長のひと声が大きく影響している。内容的には多岐にわたり、初代の後期型でも別々だったダンパーや電動パワステに加えて、スプリング、フロントハウジング、スタビライザー等にまで及ぶ。

 初代の86ではBRZと共通だったエンジン特性も、 GR86ではアクセル開度と要求トルクのマップの初期ゲインが高められていて、初期でグンとトルクが立ち上がり挙動をコントロールしやすいようになっている。

 同じくATもスポーツモードにすると変速ショックをともなうほどダイレクト感があり、 スポーツ走行でも十分に楽しめるよう味付けされている。

 同じ工場で生産される兄弟車としては異例なほど、目指すべき味〟のために作り分けられていて、実際に走りもそれなりに違う。よりGT的な性格を強めたBRZに対し、GR86はピュアスポーツらしさが増している。

 2023年秋の改良で足まわりに手が加えられたほか、初代と同様、ザックス製ダンパーやブレンボ製ブレーキなど魅力的社外ブランドのアイテムが設定されたのも歓迎だ。 手ごろなサイズとパワーを持ったFRスポーツとして、今後も一定の人気を維持していくに違いない。


モータージャーナリストの視点!

 流通の絶対量は乗用車よりもずっと少なくても、 FRの2ドアクーペだからこそ欲しいという層が一定数存在することから、 相場は全体的に割高となっている。 とくに上級グレードで程度の良い個体は年式のわりにかなり高め。 数としては86/GR86のほうがBRZよりも圧倒的に多く、少ないBRZのほうが希少価値でやや高値で、 いずれもMT比率が高いが、ATはグンとリーズナブルになる。 オーナーは当初は40~50代が中心だったが、徐々に20代の若い層も増え、その影響が荒く乗られた個体も少なくないことには注意したほうがよい。



各世代のウリはここだ!

 

86のルーツ!

AE86

カローラレビン/スプリンタートレノ

(1983年~1987年)


モータースポーツの登竜門

●テンロククラスで最後のFR車

● 名機4A-GEUを搭載

● 2ドアクーペと3ドアハッチバックを設定





86の兄弟車

スバルBRZ

(2012年~)


スバル唯一のFRスポーツ

●やや控えめな内外装デザイン

● 正確なハンドリングを追求

● 現行型はエンジン特性も異なる









FRスポーツの楽しさを再発掘

86

(2012年~2021年)


● 2.0L水平対向エンジンを搭載

● 派手な配色のインテリアも選択可能

● 多くの限定車を設定


GT“Limited”はGTの装備に加え、本革×

世界トップブランドの内装表皮材アルカン

ターラのシート表皮を装備。インテリアカ

ラーはブラックとレッドの2色を設定。




より際立つドライバビリティ

GR86

(2021年~)


● 2.0L水平対向エンジンを搭載

● BRZとの差別化を拡大

● 熟成されたメカニズム


D-4S搭載、水平対向4気筒エンジン。2L

から2.4Lへの排気量アップにより動力性

能を向上し、0-100km/h加速性能を従来

型の7.4秒から6.3秒に高めた。

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