四駆の逸材!
復活に大きな期待
●三菱自動車 パジェロ
バブル期、スペシャルティカーが輝く中で、四駆としての存在感をグッと高めたパジェロ。
2台乗り継いだというテリー伊藤さんは、この車にどんな想いを抱いているのでしょうか。
Interviewer: Koichiro Okamoto (Motor Joumalist)
Photographs: Katsuaki Tanaka
三菱といえばパジェロ RVブーム黎明期の主役
今ではアウトランダーがあるし、デリカも三菱の顔になっているけど、やっぱり三菱といえばパジェロだよね。 なくなって何年もたった今でもパリダカでの栄光は忘れない。
僕もパジェロが大好きで、かつて2台乗り継いだよ。 2台とも大ヒットした2代目の丸目の2ドアのショートで、1台目がガソリンで2台目はディーゼルのターボだ。
当時はやっていたカンガルーバンパーを付けたり、天井に大きなライトやミラーの横にイエローのフォグランプを付けたりしていたものだよ。 ほとんど都しか走らないのにね(笑)
メーターとは別の高い場所にクルマのカタチをした傾斜の表示や方位磁石が付いているのもパジェロならではだったよね。当時は冬になるとよくスキーに行っていたんだけど、四駆に乗るのは初めてで、 パジェロに乗っていればどんな雪道でも大丈夫という安心感があった。
あの頃は、今の10倍ぐらい「冬」に対する感度が高かったと思う。 金曜日の夜になると神田のスポーツ用品店に行って道具を調達して、 それから雪山に向かうんだ。まだスタッドレスタイヤが貴重でチェーンを使っている人が大勢いて、車高の低い乗用車のほうが圧倒的に多くて、そんな中にパジェロでスキー場に乗り付けるのがカッコよかった。志賀高原とか苗場がとってもよく似合っていた。
バブル期を象徴するクルマといえばシルビアやプレリュードといったスペシャルティカーだろうけど、一方で雪道最強神話から四駆がどんどん存在感を高めていった時代でもある。 その中でパジェロは間違いなく主役だった。
今やすっかりランクルのひと勝ちだけど、当時は他にはサーフやテラノやビッグホーンなど有力なライバルがいくつもいた中で、もっとも輝いていたのがパジェロだ。 今でもたまに中古車屋さんで見かけると、思わず買いそうになっちゃうよ。
かつての栄光を取り戻せるクルマとして復活に期待
そんなパジェロがモデルチェンジするたびそのカラーが薄れてゴージャスさを追求するようになったのを残念に思っていた。 昔からのファンは大勢いるのに、むしろパジェロのほうから離れていった気がしてならない。
かといって高級感では明らかにランクルより見劣りした。それでついに消滅してしまったのだから、やっぱりもっといいやり方があったはずと思わずにいられない。
少し前に三菱が今後の経営計画を発表した中で、パジェ口の復活をにおわせる内容があったことに多くのファンが歓喜した。
ただし、たとえ復活しても、それはもう「私をスキーに連れてって」の映画に出てきそうな身近なクルマではない。ランクル300あたりの対抗馬となる、もっと高価で高級なクルマになるはずだ。
理由は、そうしないと三菱が儲からないから。1台当たりの利幅を確保しないと、パジェロを復活させる意味がないからだ。
ならば別にパジェロイオやパジェロミニも出してほしいところだけど、それこそ1台売れても儲けが小さい。 いまそうした薄利多売のクルマほど、トヨタのような体力のあるメーカーじゃないと出せなくて、三菱ぐらいの規模のメーカーにとっては難しい時代なんだ。
その点で、これは!と注目しているのが、 もうすぐ出るランクル250だ。300とはぜんぜん雰囲気が違って、武骨なイメージを打ち出しながらも現代的で高級感をほどよく兼ね備えているところが絶妙だ。僕にとっては大ヒットした当時のパジェロの姿が重なって見えたよ。
パジェロだってヒットした路線を上手く踏襲して作り続けていれば日本のラングラーになれたかもしれないし、そうなる素質を持った数少ない逸材のはず。せっかく復活するなら、ぜひかつての栄光を再び取り戻せるようなクルマであってほしい。 目指せ、打倒ジープだ!
歴代パジェロをご紹介!
三菱自動車 パジェロの変遷
オークマン2024年2月号掲載