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【オークマン 24年3月号】岡本幸一郎の思い出の車列伝




ある時代を席巻した

圧倒的な人気車種


●三菱自動車 パジェロ


本格的なクロカン車でありながら、快適性や運動性能にも優れたパジェロ。

終焉から5年の歳月が流れる名車を、モータージャーナリストが解説します。

Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)


月間新車販売台数において1991年には1位になったことも


このところ復活の声がちらほら聞かれるパジェロの情報に色めき立っている人も少なくないことだろう。昨年秋には初代パジェロが日本の自動車史に優れた足跡を残した名車として日本自動車殿堂の「歴史遺産車」に選定されたことも伝えておこう。

 そんなパジェロの歴史は、2019年に700台限定で販売されたファイナルエディションを最後に幕を下ろし、はや5年がたつ。理由は歩行者保護への対応が困難だからだとう。

 また、当時の売れ行きはあまり芳しくなく、日本人の感覚では、パジェロは世界でも知られた存在のように見えたが、意外とそうでもなかったらしく、それならアウトランダーを頂点に据えようという話になったようだ。

 ところが、あれほど一世を風ふう靡びしたクルマだから、なくなると惜しむ人が続出して、すっかりプレミア相場となっている。

 37年で4世代、国内外向けを含めた全生産台数は実に324万台に上る。4世代のうち内容的にはざっくり前半2世代と後半2世代に分けられる。

 ジープのライセンス生産などで培ってきた4WD技術を生かしつつ、乗用車感覚で乗れる快適性を兼ね備えるべく開発された初代は、コアなユーザーはもちろん一般ユーザーからも高く支持された。

 83年にはパリ・ダカールラリーに参戦し、市販車無改造クラスでデビューウィンを果たしたことで、欧州をはじめ海外でも高い人気を博するようになった。

 87年に当時のハイソカーの要素を取り入れて登場した「エクシード」の売れ行きは上々で、パジェロの象徴的存在として、その後の方向性に大きな影響を与えることとなった。

 2代目は91年に登場。本格的なクロカン車としては都会的なスタイリングとなり、月間新車販売台数でも1位を記録するほどのヒット作となった。ビスカスカップリングのセンターデフにより走行中でも2WD/4WDが切り替え可能な「スーパーセレクト4WD」を世界で初めて搭載したほか、デフロック時にも作動する「マルチモードABS」の採用も特徴だ。


クロカン車としての資質に快適性と運動性能をプラス


 3代目は、それまでのラダーフレームだけでなくフレームに組み合わせたラダーフレーム・ビルトイン・モノコックボディ構造を採用した点が新しい。これによりボディサイズを拡大したにもかかわらず、約100キロの軽量化と低重心化を実現。4輪独立懸架になったのもこの世代からだ。エンジンは直4ディーゼルとV6ガソリン直噴が用意され、スーパーセレクト4WDは機械式から電動式の「Ⅱ」に進化した。

 ただし、泥臭い印象の払拭を意図したスタイリングは往年のファンには不評で、内容も含め登場時点ですでに古さを感じさせたのは否めない。そこで4代目では一世を風靡した2代目を現代風にアレンジしたデザインや配色とされた。

 3代目の基本構成を踏襲しつつ、車体剛性の強化や軽量化による運動性能の向上を意識した変更を実施。その後も十年余りの現役の間に大小10回もの改良を行った。

 エンジンは、ガソリン版には可変バルブタイミング機構のMIVECが装備されたほか、2010年には厳しいポスト新長期規制をクリアしたクリーンディーゼルが用意された。車両制御面ではトラクション制御と横滑り防止の機能を統合した高度なデバイスが搭載された。

 これほどのクルマが上級グレードでも400万円台というのは、今思えばなんと安かったことか。パジェロの終しゅうえん焉は、一つの時代が終わったように思えて寂しい限りだが、いつの日かまた、そのDNAを受け継いだニューモデルが世に出てくることを期待せずにいられない。



モータージャーナリストの視点!

 過去にあれほど売れたクルマながら海外に流出したのか、国内の流通量はあまり多くはなく、全体的に相場は割高だ。年式の古い初代や2代目も走行距離が少なく程度がよければかなり高い。3代目は比較的安いほうだが、限定発売の「パジェロエボリューション」だけは別格的に高い。現時点で最終モデルとなる4代目も高値で、特に「ファイナルエディション」は約450万円という新車価格を考えると、かなりのプレミア相場となっている。もし次期型が出ても、上記の特別なモデルの高値傾向はそう変わらないだろう。



各世代のウリはここだ!

 

初代(1982年~1991年)


ジープ造りのノウハウから独自に開発


副変速機内蔵 パートタイム4WD

●豊富なボディタイプ

● フロント独陸懸架




1989年のスーパーエクシード。80年代後半は豊富なボディタイプの中でも、豪華装備を兼ね備えた上級グレードが人気になり、ユーザーニーズの潮目が変わった。





2代目

(1991年~1999年)



居住性、操縦安定性、動力性能が向上


●世界初の「スーパーセレクト4WD」

● マルチモードABSなどを採用

● 最大で30超の多彩なバリエーション




91年のスーパーエクシード。2代目は、メタルトップ、ミッドルーフ、キックアップルーフ、Jトップの4種類のボディが用意され、多彩なバリエーションを展開した。



3代目

(1999年~2006年)



より現代的に大きく進化


● ラダーフレーム・ビルトイン・モノコックボディ

●4輪独立懸架式サスペンション

●「スーパーセレクト4WDⅡ」に進化



スーパーセレクト4WD」の進化系「Ⅱ」。後輪2WD、フルタイム4WD、直結4WDを走行中に、直結ローレンジ4WDを停車時にトランスファレバー操作で切り換え可能。




4代目

(2006年~2019年)



集大成となる最終進化系


● ポスト新長期規制をクリアしたクリーンディーゼル

●ASTC(アクティブスタビリティ&トラクションコントロール)を搭載

●2代目を彷彿とさせるデザイン


ASTCは、4輪個々に適切なブレーキがかかりスピンなどを抑制する機能と、空転した車輪へブレーキをかけ、その駆動力をほかの駆動輪へ伝える2つの機能を有する。



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