時代を超越する価値
すでに日本の至宝!
●マツダ ロードスター
いくら時代が変わっても、変わらない価値を持ち続ける車がある。
それがロードスター。
若き日のテリー伊藤さん、この車にはどんな思い出があるのでしょうか。
Interviewer: Koichiro Okamoto (Motor Joumalist)
Photographs: Katsuaki Tanaka
成田まで迎えに行ったのにキャリーバッグが積めず…
今日着てるマッハGoGoGoのスタジャン、面白いでしょ?
アメリカで買ってきたんだけど、鉄腕アトムあたりもそうで、日本のアニメがむこうで大人気なんだ。ロードスターもまさにそう。日本で生まれて、アメリカでももてはやされてる。
僕も35年前、出ると聞いてすぐ注文して、発売から1カ月ぐらいで納車された真っ赤なATに乗っていたんだ。
別売りのハードトップも買ったんだけど置く場所がなかったから、せっかくロードスターなのにほとんど付けっぱなしにしていて、たまにしかオープンにできなかったよ。
そういえば当時おつきあいしていた国際線のCAの女の子を成田まで迎えに行ったときに、彼女のキャリーバッグがトランクが狭すぎて積めないなんてこともあった。
ハードトップがなければホロを開けて後ろになんとか積むことができたかもしれないけど、結局どうしようもないから空港のロッカーに預けたんだ。せっかく迎えに行ったのにバカみたいだよね。まさにホロ苦い思い出だよ(笑)
そのロードスターには4年ほど乗った。途中で出た黄色の限定車を買いそびれたので、また出たら次こそ買おうと思っていたんだけど、モデル末期に出た限定車が白だったんだ。もし黄色があったら絶対に買っていたんだけどね。
とにかく好きな人にはたまらないクルマ。荷物があまり載らないこと以外、悪いところはなかったよ。あんなに楽しいクルマはない。でも箱根や軽井沢まで行って帰ってくると疲れるんだ。まあ、その多少の疲れも含めて楽しむべきクルマなんだろうけどね。
どの世代にも持ち味がある。実は「いつかは」が似合う
ロードスターは日本の宝だと思っているよ。いくらSUVやミニバンがはやっても、老舗の蕎麦屋みたいに時代が変わっても変わらない価値がある。
昔は乗っていたけど事情により手放して他のクルマに浮気した人も、まだ乗ったことのない人でも、いつかは乗りたいと思っている人は大勢いる。
その意味では、かつて憧れの象徴としてクラウンが「いつかは」と言っていたのとは意
味合いが違って、本当の意味で「いつかは」が一番相応しいクルマだと思うよ。
それにロードスターがいいのは、初代も2代目も3代目も現行型も、どのロードスターにもそれぞれの持ち味があって、好みのモデルを予算に合わせて選べるところだ。
それはスカイラインやランクルといった伝統ある名車が世代を問わず輝いて見えるのに通じるものがある。スカイラインやランクルよりもはるかに歴史が浅いのに、もうすでにロードスターはそんな特別な存在になったんだ。
かつては2代目は失敗作だと思ったりしたものだけど、時間が経って今ではそんな感じもしなくなった。2代目には2代目なりの味わいがある。どの世代を買っても正解だ。
価格も高くないし、初代の中古が値上がりしたといっても手が届かないほどじゃない。それ
に意外とロードスターって走行距離が伸びていなくて、10万kmを超えたという話をあまり
聞かない。程度がよくて手が届く個体がまだまだ選び放題だ。
ただし、ロードスターに乗るためには、肉体のコンディションをある程度キープしておかないとダメ。腰が痛くなったり疲れたりして十分に楽しめなくなってしまう。お金よりもむしろ必要なのは体力だよね。
次の世代にはEVになるというウワサもあるけど、あまり重くさえならなければ悪くないんじゃないかな。もともとエンジン命のクルマじゃないし、長距離を走るクルマでもないし、むしろ室内が静かになるからデートのときには会話がはずんでいいかもしれないよ。
話していて、僕自身もまたムショーに乗りたくなってきた! でもまだ現行型には黄色がないんだよね。出たら考えよう。
歴代ロードスターをご紹介!
マツダ ロードスターの変遷
▼初代(1989年~1998年)
ユーノスブランドの第一弾として登場するや小気味のよい走りも受けて世界中で人気を博し、ほぼ絶滅状態にあったライトウエイトオープン2シーターを見事に復活させた。歴代唯一のリトラクタブルヘッドライトを採用する。
▼2代目(1998年~2005年)
初代とは別物の抑揚あるデザインには賛否両論だったが、内容的には初代との共通性が高い。1.8Lがメインとなり、
MTは6速となった。ガラス製となったリアウインドウは初代にも流用可能。歴代唯一のターボや固定式ルーフのクーペが限定販売された。
▼3代目(2005年~2015年)
RX-8と共通のNCプラットフォームを採用し3ナンバーボディに。エンジンは2.0Lとなり、内装や装備も上級意向をうかがわせる仕様となった。幌の部分を12秒で開閉可能な電動格納式ハードトップとした「RHT」もラインアップ。
▼4代目(2015年~)
ボディサイズを切り詰め、徹底して軽量化を図るなど、「原点回帰」を念頭において開発。ソフトトップ車には1.5L、電動格納式ルーフを組み合わせた「RF」には2Lエンジンを搭載。「KRC」やアシンメトリックLSDなど独自の技術を採用。
オークマン2024年4月号掲載