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【オークマン 24年5月号】岡本幸一郎の思い出の車列伝




世界で愛される

ライトウェイトオープン


マツダ ロードスター


誕生から35年、魅力的な非日常を提供し続けるロードスター。

世界中で愛されるオープン2シーターをモータージャーナリストが解説します。


Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)


〝素〟を極めたNA型から 新たな試みに挑んだNB型


 約35年前、登場前から世界中で注目を集めていた初代NA型は、発売されるや想定をはるかに超える売れ行きを見せた。日本でも各地でオーナーズクラブができ、ミーティングが盛んに行われるようになった。オーナー同士の仲間意識が極めて高いのはロードスターの特徴だ。

 ほどなく大手チューニングメーカーから小規模なショップまでが格好の素材としてカスタマイズを手がけ、ロードスターを扱った特集本が続々と発行されるなど、アフター界もかつてないほどの活況を呈した。

 こうした動きは海外でも、とくにアメリカでは日本をしのぐほどに盛り上がりを見せた。

 ほぼ絶滅状態にあった当時ライトウェイトオープンの非日常性を味わいたい人が実は少なくないことを証明したロードスターが世に与えた影響は大きく、欧州プレミアムブランドを中心に世界中の自動車メーカーが後を追ってオープン2シーターの開発を急いだ。

 NA型が人気を博したのは、ドライビングの楽しさを抜きには語れない。後輪駆動の専用プラットフォームで実現した、キーワードでもある「人馬一体」の走りには、「ヒラリ感」と評される独特の楽しさがあった。

 プレーンな容姿はいじる素材としても都合がよく、走りもいじったことがその通り反映される醍醐味があった。NA型はそんな〝素〟の感じが魅力だったように思う。

 続くNB型では一転して抑揚のあるスタイリングとなり、リトラクタブルヘッドライトを廃したことも物議をかもしたが、メカニズム的にはNA型との共通性が高く、初めて6速MTが搭載されたほか、ドライブフィールも洗練されて質が高まるなど進化していた。

 ビニールからガラス製になったリアスクリーンは、NA型にも装着可能だったことから流用する人が続出。一方で、クーペやターボなど新たな方向性を模索したのもNBのときだ。




NC型で上級志向するや ND型で原点回帰を図る


 3代目のNC型ではボディーサイズの拡大やエンジンの2・0L化など、ひとつ上の車格を目指したクルマに成長した。幌はZ字型に開閉するよう変更され、電動ハードトップの「RHT」もラインアップされた。

 こうしてロードスターが〝上〟を目指した背景には、続々と登場して人気を博した欧州勢の高級オープンカーの影響も少なからずあったに違いない。

 ところが、4代目のND型ではロードスターの本質を見つめ直し、「原点回帰」を念頭に置いてボディーサイズを切り詰め、徹底して軽量化を図った。

 小気味のよい走りを味わってほしいという開発責任者の思いから、日本仕様のソフトトップ車のエンジンをあえて1・5Lのみとし、新設の「RF」には重量増への対応とクルマの性格を配慮して2Lを組み合わせた。

 登場からはや9年が経過しても古さを感じさせないのが不思議な気もするが、中身にはだいぶ手が加えられている。

 当初より性能向上したエンジンもフィーリングは別物になっているが、より大きく変わったのは足まわりだ。2021年末にロールを軽減して姿勢を安定させる「KPC※」と呼ぶ独自の技術を採用した。

 さらに2023年末には、ハッキング対策を主とする電子プラットフォームへの移行により実は中身が大きく刷新された。同時に電動パワステの制御の最適化やアシンメトリックLSDの搭載、エンジンの改良など走りにも手が加えられ、持ち前の楽しさにさらに磨きがかかった。

 海外のライバルたちはすっかり影が薄くなっているが、ロードスターだけはますます存在感を増しているようだ。誕生から35年、これほど世界で多くの人を笑顔にさせてきたクルマはない。


※KPC=キネマティック・ポスチャー・コントロール/旋回時の安定性を高める電子制御技術



モータージャーナリストの視点!

かつては中古車として年式や程度に相応の一般的な相場を形成していて、20万円を切る個体が普通に見つけられたものだが、ここ10年ほどは全体的にすっかり上昇している。とくにNA型の程度のよいものは驚くほどの高値となっており、NB型やNC型も割高感が強い。今後の動向で注目すべきは、2021年に発売された特別仕様車の「990S」だ。軽量化とエンジンや足まわりの専用チューニングにより実現した走りは、歴代ロードスターのひとつの頂点といえる走りの仕上がりを誇る。最新版には設定の予定がないらしく、すでに値上がりの兆候が見られる。



各世代のウリはここだ!

 

初代1989年~1998年


ライトウェイトオープン復権の立役者


●プ歴代唯一のリトラクタブル

 ヘッドライト

● “ヒラリ感”と評される

 独特の走り味

● 頻繁に特別仕様車を設定



リトラクタブルヘッドライトの初代ロードスターは、8年以上生産されたロングセラーモデルのため、最も多くの限定車が登場した。



2代目

1998年~2005年



質を高め新たな可能性に挑戦


● 1.8L車に6速MTを搭載

● ターボやクーペを限定販売

● 多くのものを初代に流用可能




2代目は受注生産でクーペボディに改造された「ロードスター クーペ」や、歴代でターボチャージャーを搭載した唯一のモデル「ロードスター ターボ」が登場した。



3代目

2005年~2015年


ひとクラス上のスポーツカーに


● RX-8と共通の

 NCプラットフォームを採用

● アテンザ等と同じ2.0L直4

 エンジンを搭載

● 電動格納式ハードトップの「RHT」を設定



2006年、トランクスペースを全く犠牲にしない画期的な電動ルーフシステムを装備した「RHT(パワーリトラクタブルハードトップ)」モデルが設定された。



4代目

2015年~



「原点回帰」を念頭に置いて開発

● 車体別に1.5Lと 2.0Lエンジンを搭載

● 小型化および徹底した軽量化

● 走行性能を高める独自技術を導入




「ライトウェイトスポーツ」の初代への原点回帰さながら軽量化を実現。より効果的な部位にアルミ素材を使うことで、軽量化を運動性能の向上につなげた。




オークマン2024年5月号掲載

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