信頼性に拍車をかけて
愛され続ける“ランクル”
●トヨタ ランドクルーザー
ランクルという1つのジャンルがあるかのごとく根強いファンを熱狂させ続けるクルマ。
海外でも絶大な評価を誇るオフローダーの今を、モータージャーナリストが解説します。
Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)
ランクルの本流にふさわしく質実剛健を追求し原点回帰
整理すると、ランドクルーザー(※以下「ランクル」)には大別してヘビーデューティー系、ライトデューティー系、ステーションワゴン系の3タイプがある。4月に発売されて話題となっている250は、ライトデューティー系の最新版となる。
フラッグシップに据えられたステーションワゴンの60、80、100、200、300という系譜があり、一方でヘビーデューティーな40、70という系譜があり、その70に乗用車の要素を加えて派生したのが、ライトデューティー系の「プラド」だ。
プラドはステーションワゴン系の弟分的な位置づけで人気を博した。ところが、世代の進化を追うごとに当初の理念から外れて高級志向に傾倒しすぎた感もあった。
そこで質実剛健を追求し、ランクルの原点に回帰することを念頭に置いて開発されたのが250だ。
車名からプラドのサブネームが外されたのも、このクルマをランクルの本流として据えていくというトヨタの意思表示に違いない。
300と同じGA-Fプラットフォームを土台としており、ボディーサイズも300と同等となりプラド時代よりもかなり大柄になった。ホイールベースは、30年あまり前に悪路走破性と車内の居住性を両立するための最適値として導き出されたランクル伝統の2850㎜とされた。これは実質的な前身の150プラド比で60㎜増となる。
機能面では、接地性を高める新開発サスペンションや、スイッチ操作でフロントスタビライザーの締結状態を任意で切り替えられるトヨタ初の機構、ランクル初となる電動パワステの採用が特徴として挙げられる。
エンジンは300がV6を搭載するのに対し、250はすべて4気筒となり、グローバルで計5種類のパワートレインが用意される。日本向けは2・8ℓディーゼルと2・7ℓガソリンの2種類が発売時に設定されたが、残る3種類の2・4ℓガソリンターボとパラレルハイブリッドと48Vマイルドハイブリッドのディーゼルが今後どうなるかはわからない。
根強いファンの声を受けて最新仕様で再々販売が決定
一方で、誕生から40年を迎えたヘビーデューティー系の70が、またしても日本に帰ってくる。
いまだ当初から基本設計を大きく変えることなく現役という国や地域が海外にはたくさんあるが、日本国内での販売は2004年にいったん終了した。ところが、根強いファンから、70らしさを変えることなくずっと売り続けてほしいという旨の多数の声がよせられたという。
その思いに応えるべく、生誕30周年を記念して、2014年に1年間の期間限定で再販された。そのときには当時の規制に適合する仕様の車両が販売されたのに対し、生誕40周年となる今回は継続的に販売することを前提に、ボディーワークの改良のほか機能面でも多くの部分をアップデートしての導入となり、日本で販売される70が世界最新の仕様ということになる。
2014年の再販車が1ナンバー登録の貨物車でMTのみだったのに対し、今回の再々販車は後席の快適性が高められ、乗用の3ナンバーのATとなる。
MTの設定がないのは、先進安全支援装備の搭載が義務づけられたのを受けてのことだ。リアシートは従来と同じく前倒しと跳ね上げが可能で、一体式から6:4分割可倒式になり、荷室の利便性が向上している。
300、250、70の3台を本格的なオフロードコースで乗り比べる機会があったのだが、各車の違いが興味深かった。300と250では走破性能は互角ながら、300はより快適に、250はより扱いやすくて楽しく走ることができた。70は別世界で、ありのままに伝わってくる過酷な状況を克服していくところに醍醐味があった。
モータージャーナリストの視点!
現行の300、250、70は入手困難のため中古車の価格が高騰しているのは別格的として、それ以外の歴代モデルもいずれも高めの相場となっている。その中でも、80と100の走行距離が多めの個体であれば100万円台から探せないことはない。旧70とともに1980年代のレトロな雰囲気の60もプレミア相場となっており、ディーゼルを除いてかなりの高値となっている。80や100を60風に仕立てたカスタム車両も数多く流通している。ランクルの高値の相場は定着していて、当面続きそうだ。
各世代のウリはここだ!
Light Duty
150系プラド(2009年~2023年)
ちょうどよいサイズでオンとオフを両立
● 2013年と2017年に大規模なマイナーチェンジ
● 2015年にV6ガソリンを廃止しディーゼルを復活
● KDSSを標準装備
※KDSS=キネティックダイナミックサスペンションシステム
中古車小売り価格帯
250万円~700万円
2009年の登場時からKDSSを標準装備。オンロードでは高いロール剛性による優れた車両安定性を、オフロードでは大きなサスペンションストロークの確保による卓越した悪路走破性を実現。
250系(2024年~)
ランクルの中核を担うべく
原点回帰を図る
● TNGAによるGA-Fプラットフォームを採用
● 丸目と角目のヘッドライトを設定
● SDMをトヨタ初採用
※SDM=スタビライザーディスコネクションメカニズム
● 電動パワステをランクル初採用
新車価格
520万円~735万円
通常モデルのフロントライトは角目のリフレクター式3眼LEDヘッドランプだが、特別仕様車の「ZX First Edition」では、丸目型のBi-Beam LEDヘッドランプを採用。好みの分かれるところ。
Heavy Duty
70系(2014年~2015年)再販モデル
70の発売30周年を記念して期間限定販売
● 現代的な内外装デザインに
● 4LV6ガソリン+5速MTを搭載
● 国内初ダブルキャブ ピックアップを設定
中古車小売り価格帯
450万円~700万円
10年ぶりの70系の復活に際し、ラインアップされたダブルキャブ ピックアップトラック。ランクルの歴史の中で、日本初導入となる「荷台付きのナナマル」。ホイールベースがバンより450mm長い。
70系(2023年~)再々販モデル
ヘビーデューティー系初の3ナンバー車に
● 全長が80mm拡大
● 2.8L直4ディーゼル+6速ATを搭載
● Toyota Safety Senseを搭載
新車価格
480万円
スムーズな運転と操作性へのニーズに応え、MTからATへと変更。小型・高効率・低燃費を両立させた6連ギアトレインが、力強い走りと強力なエンジンブレーキを実現しオフロード走行を支援。
オークマン2024年7月号掲載