
手が届くスポーツカー
デザインは不変の魅力
●日産 フェアレディZ
特別に車好きでなくともZで通じる車、フェアレディZ。
このところ良いニュースが少ない日産ですが、テリーさんがZを核にした独自の新提案をしてくれました。
Interviewer: Koichiro Okamoto (Motor Joumalist)
Photographs: Katsuaki Tanaka
ようやく待望の受注再開 乗った印象もすごくいい

Zの受注が再開されて、バックオーダー分の納車も一気に進んでいるようで、ちらほら街で見かけるようになった。今までショールームにすら置いてなかったけど、今はちゃんとあるよね。
目にする機会が増えて、どうやったらこんな素敵なデザインができたんだろう? という思いを新たにしているところだよ。
ただ、あえて採用しなかったという話だけど、丸目の方がもっと似合うのにという思いはある。
最新型のZは乗った印象もすごくいいよ。いろいろなものが軽くて乗りやすいし、このデザインになる前のZより乗り心地も劇的に良くなっている。
そういえば開発責任者も、GT-Rはモビルスーツだけど、Zはダンスパートナーなんだっていう言い方をしていたよね。気軽に付き合える、優しい感じのスポーツカーというわけだ。
NISMOも乗ったけど、普通のZと全然違って、乗り心地がかなり硬くてスパルタンだよね。なのにATしかないというのがちょっと不思議だ。いくらZはもともとAT比率が高いといっても、NISMOこそMTが選べないとね。
そういうところに、日産がこうなってしまった要因があるような気がする。最近は良くないニュースばかりだけど、売れてないのはハイブリッドがないだけじゃなくて、他にもいろんな理由があって、結果的に売れてないんだと思うよ。
とにかく今の日産車は目新しさがないんだ。80年代の終わりに「元気な日産」と言っていた頃には魅力的なクルマがいっぱいあったし、前の前のマーチとかキューブとかカクカクしたエクストレイルとかジュークも良かった。今の日産はそういうクルマを出せなくなってしまっている。
商品企画が社内でどういうプロセスで決定されるのかはいろいろあるだろうけど、なんか最大公約数の取り方が下手な気がする。もっと強力なリーダーシップを持った人が、これで行くんだって引っ張ってくれた方がいいクルマができると思うよ。
ポルシェの成功例を手本に
Zも多彩に展開すればいい
そんな日産が今後、盛り返していく上で、Zの果たす役割はどうなのかについては、このままだったら大して役には立たないだろうね。
現行型がデビューして2年あまりの間、注目度は高いのに全然人目に触れることがなくて、〝出る出る詐欺〟状態だったのがもったいなかった。
それに、昔だったらレースやラリーに出ていい成績を収めたら、翌日にはディーラーに列ができたという話もあるけど、今の時代はレースで勝ってもほとんど影響はない。
じゃあZというクルマの価値を最大限に生かすにはどうすればいいかというと、ヒントはポルシェにあると思うんだ。
911という絶対的な存在があって、そのイメージを受け継ぎながら、SUVやセダンやシューティングブレークを作ればいい。
カイエンやマカンやパナメーラはどこから見てもポルシェであって、911の仲間だよね。そんな感じで、Zのイメージをモチーフにして、いろいろ出せばいいんだよ。もちろんデザインで大事なのは、Zらしいあのロングノーズの雰囲気を壊さないことだ。
それで、今のクラウンでやったように、あらかじめ4種類もある手の内をすべて見せてしまう。今度は絶対に、〝出る出る詐欺〟のようなことをしてはいけない。
ポルシェだって、いまや911よりもカイエンやマカンの方が圧倒的に販売台数は多いんだ。それでも、911以外が売れることで、911はより素晴らしいクルマになる。
Zもそのあたり見習ってもいいんじゃないかな。それでZらしくリーズナブルな価格に抑えれば、日本でも海外でもけっこう人気が出そうな気がするんだけどね。
歴代フェアレディZをご紹介!
日産 フェアレディZの変遷

●6代目Z34型(2008年~)
ひとつ前のZ33をベースに、プラットフォームなどをキャリーオーバーしつつ、よりZらしいフォルムを実現するとともに運動性能を高めるべくショートホイールベースとされた他、より筋肉質なスタイリングとされた。

●7代目RZ34型(2022年~)
Z34の型式を受け継ぎつつ、S30やZ32など歴代モデルの面影を随所に取り入れたデザインとした他、エンジンを400ps超の3.0LV6ツインターボに換装し、シャシーのセッティングを見直すなど大幅な改良を実施した。

●NISMO赤いアクセントが印象的な内外装には走るための機能を追求した変更が施されている。エンジンの過給や点火制御などを変更し、強化した9速ATを組み合わせ、より俊敏でパワフルな加速を実現。車体やシャシーも強化している。

●2025年モデル
走行性能面での変更はないが、SOSコールを全グレードに標準採用した他、ボディカラーを一新し、新色の「ワンガンブルー」「ミッドナイトパープル」などを含む計11色を用意(一部は2025年度中に生産開始予定)。
オークマン2025年2月号掲載記事