シトロエン DS3①【思い出の車列伝】
- info-am
- 4月1日
- 読了時間: 5分

フランス車ならではの
魅惑のデザイン!
●シトロエン DS3
※2016年からはDSブランドで販売
美しく洗練された独特のデザインは、フランス車の真骨頂で、
街中ではやはりひときわ目を引く。
ご自身も2台乗り継いだというDS3の魅力をテリー伊藤さんに語ってもらった。
Interviewer: Koichiro Okamoto (Motor Joumalist)
Photographs: Katsuaki Tanaka
宇宙船のような初代DSと
オシャレで高級な現行DS

DS3はすごくよかった! DSブランドがシトロエンから独立する前の時代にDS3のハッチバックを、DSブランドになってからカブリオのMTと乗り継いだんだ。
思い起こせばシトロエンには昔、2CVにも乗ったし、つい最近までC6に乗っていたし、実はちょうど今C4カクタスの中古車を買おうと思っているところだよ。
シトロエンもDSも本当にいい! DSはシトロエンに対して、トヨタでいうレクサスみたいなものだけど、プレミアムブランドといいながら、偉そうな感じがしないところもいい。ひらすらオシャレだ。DS7からDS3までどれも素晴らしいよ。
SUVっぽくなった現行のDS3だって、かわいくて高級感もあって、すごくいい。僕の鎌倉の家の近くにも2台いて、鎌倉のオシャレな家にDS3がまたよく似合うんだ。きっとオシャレな女の子が乗っているに違いない。そんな絵が目に浮かぶクルマだよね。
そのDSというブランドの起源といえるのが、1950年代のシトロエンDSだ。70年代まで20年ほど生産されて、フランスにはこんなクルマがあると世界に知らしめた。
70年代といえば僕は新人ディレクターでお金がない頃だったから、当たり前だけど高嶺の花だった。まわりの上の人たちでもDSに乗っている人はあんまりいなかったけど、目立たないわけがない。
当時、僕も乗せてもらう機会があって、まるで宇宙船だと思ったよ。運転席に座ったときに見える景色からして、切り立ったフロントガラスとか、1本スポークのステアリングとか、後ろを見ると予想外にキュッと絞り込まれていたりとか、何から何まで独特だった。ファンタジー過ぎて夢を見ているかのような空間だったよ。
乗った印象も同じく独特だった。よく「魔法の絨毯」なんていわれている通り、本当にしなやかさを極めていて、高速道路を走ると、決して速いわけじゃないけど、前を走るクルマにシューッと忍び寄っていくかのような走り方をするのが印象的だったよ。でも昔のハイドロは壊れると本当に大変だったらしいけどね。
ファンタジーである一方で、あまりにデザインが奇抜だったから醜いアヒルの子的な見方もされたけど、とにかくデザインから走りまで、ぶっ飛んだクルマだったよ。
フランス生まれだからこそ
あの独特の雰囲気を出せた
2009年に復活したDSも、昔のDSとは別物という感じだけど、やっぱりフランス人ならではの気概が伝わってくるよね。
フランス人は自分たちが世界で一番、美意識が高いと思っている。陽気なイタリア人や理詰めなドイツ人や保守的なイギリス人とは違って、自分たちはアート(芸術)の国だと思っているに違いない。
世界の言語の中でも、フランス語だけはまるで流れるかのように美しいよね。フランス人というのは、そんな言葉で会話して、あの美しい街並みを見て生活しているんだ。彼らにとっては当たり前なのかもしれないけど、そういう中で生まれたクルマだからこそ、DSのような独特の雰囲気を出せるんだと思う。
僕は船にも乗るんだけど、フランスの船というのは独特の雰囲気がある。思えばそれはDSのインテリアに通じるものがある。対する日本の船はアパホテルみたい。機能的で便利だけどファンタジーじゃない。クルマも船もお国柄が出ているよね。
乗ると本当にいいクルマだから、ぜひもっとたくさんの人に乗ってもらって、DSの良さを知って欲しいと思うよ。
今はまだまだ過小評価されていると思う。たとえばメルセデスやBMWと比べると同じ車格だったら断然安いし、壊れやすいという先入観を持っている人も多いけど、今の時代もうそんなに壊れない。街中でDSを見かけると僕もなんだかうれしくなるよ。もっと増えてくれるといいんだけどね。
歴代DS3をご紹介!
シトロエンDS3の変遷
DSオートモーティブの源流_
●シトロエンDS(1955年~1975年)

堂々たる体躯に奇抜なスタイリングや斬新過ぎるメカニズムなど、その登場は自動車業界に大きな衝撃を与え、1960年代初頭にはシャルル・ド・ゴール大統領をはじめ政府首脳の公用車にも広く用いられた。大柄な車体ながら発売時にはわずか1.9Lだった直4エンジンは、のちに2.3Lまで拡大。約20年間で145万台超が生産された。
●シトロエンDS3(2009年~2019年)

上記のDSのような個性的な高級車の再来を目指した、シトロエンの新シリーズ「DSライン」の第一弾として登場。ボディやフローティングルーフ、ダッシュボードやシートカラーなどの配色を自由に組み合わせられる「ビークルパーソナリゼーション」の設定も特徴。2016年にDSブランドが独立した際に小変更し継続販売された。
●DS3 CROSSBACK(2019年〜)

2代目プジョー208などと同じ「EMP1」プラットフォームを採用し、クロスオーバーSUVに一新。登場時には1.2L直3ガソリンエンジンに8速ATが組み合わされた。彫刻的なスタイリングやひし形を象徴的に配したインテリアなど、フランスの伝統工芸を受け継ぐ匠の技が随所に息づいている。2020年6月にBEV版の「E-TENSE」を追加。
●新型DS3(2023年~)

2023年5月のマイナーチェンジで、車名から「クロスバック」が外されて「DS3」となった。このときE-TENSEなどが廃止され、1.5L直4クリーンディーゼルのみとなった。内外装にも小変更があったほか、インフォテイメント系など装備が充実した。同年10月には、1.2L直3ガソリンターボの再販売となる特別仕様車が追加された。
オークマン2025年4月号掲載記事