カスタマーサクセスの推進と循環型流通の構築に邁進していく
株式会社オークネット
新型コロナウイルスが社会に及ぼす影響が弱まり、半導体不足の解消に光が差してきたのは好材料ですが、円安、長引くウクライナ侵攻、突如として始まったガザ侵攻と、業界を取り巻く情勢はまだまだ予断を許しません。
そんな不安定な情勢にあっても、オークネットは会員様のさらなる成功体験獲得のために、
これからも様々なサービスを展開していきます。
今後のオークネットの短期、中長期の方針について、社長の藤崎とオートモビル事業本部の大畑がお話しします。
藤崎 会員の皆様、あけましておめでとうございます。2023年は、新型コロナウイルスがほぼ収束し、長く暗かったトンネルの先に明るい希望の光が見える状態での幕開けとなったことを覚えています。ただ、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、終わりの見えない円安傾向、相変わらずの半導体不足は、皆様の経営にも少なからず影響を与えたものと思います。 そんななかでも、変わらず弊社のサービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。
大畑 半導体不足については、春先に改善の兆しが見えはじめ、夏ごろに需給のバランスがほぼ数年前の水準にまで戻ったという印象です。昨年は、人気車種については納車まで1~2年待ちというのが当たり前でしたが、今はそういったことはほぼ解消されてきました。 新車の流通が増えるということは、中古車も数多く市場に出てくるということ。これは、中古車業界にとってもうれしいことですね。
――2023年は中古車業界にとってどんな年だったのか、振り返りをお願いします。
藤崎 ひと言で言うと、業界全体の信頼が問われた年だったのではないでしょうか。中古車に対する消費者の意識も大きく変わり、安心、安全といった部分をより重視するようになりました。そんななか、消費者にとって大きな指針となるAISの必要性が以前にも増して高まっています。
大畑 AISの検査台数は順調に拡大しています。弊社としては、何を変えたわけでもなく、創業時から貫いている理念である「本物主義」を徹底しているだけ。それでも、当たり前のように長くやっていることが、こうしてあらためて評価されるというのはうれしいですね。
藤崎 また、2023年は輸出業者様の動きが活発な一年だったとも言えるでしょう。夏までは2022年から引き続き、ロシアへの中古車輸出が堅調な伸びを見せました。ロシアに対して一切の輸出を禁止した欧米諸国に対し、日本からは600万円以下の車両なら輸出できたので、ロシア向けの輸出台数は常に右肩上がり。5年連続でロシアが海外仕向地第1位となりました。
大畑 ところが、そのレギュレーションが8月に変更になってしまいます。排気量が1900cc以上の車両は、ガソリン車であれ、ディーゼル車であれ、ハイブリッド車であれ、日本からロシアへの輸出が全て禁止されてしまったのです。これは大変なことになるぞと弊社経営陣も戦々恐々となりました。事実、8月の取り扱い台数は前月比で3〜4割ほど落ち込む事態に。中古車輸出事業は、このまま低迷してしまうのかという危惧もあったのですが、なんと10月にはほぼ元通りに回復。これにはとても驚かされました。
藤崎 輸出業者様のバイタリティーには頭が下がる思いです。まずは別の仕向地へのシフト。モンゴルや南米、アフリカといった国への輸出比率を上げてロシアのマイナス分をカバー。
さらに、規制の対象外であるコンパクトカーの取扱量を増やし、ロシア市場を堅持する努力
も続けていらっしゃいます。
大畑 それもこれも、根底にあるのは日本の中古車の揺るぎないステイタスです。日本で使用されていた日本車の価値、〝ユーズド・イン・ジャパン〞というブランドが世界中で認められている限り、市場に多少のハプニングが起こっても海外からニーズが変わることはないと考えています。
藤崎 円安トレンドは今後も続いていくと考えられますので、海外への輸出は今後も続伸するでしょう。引き続き海外市場を押し広げていくお手伝いをさせていただくのは、弊社としてもとても重要だと考えています。
大畑 今までは、輸出業者様はオークションでの仕入れがほとんどでした。少しでも安く購入したいと考えれば当然なのですが、現地からのニーズが増加してくれば、それだけではまかないきれなくなっていくでしょう。そこで、弊社としてはなんとか共有在庫を有効活用していただきたく、新しいサービスの提供に踏み切りました。
藤崎 現地に支店があり、現地スタッフも大勢雇っているような大手輸出業者様は、必ず自社の業販・小売サイトを持っていらっしゃいます。そこに仕入れた車を載せて、それを見た現地のカスタマーが簡単に購入できるフォーマットを構築済み。そのサイトに、共有在庫の車両も掲載できるよう連携を始めたのです。現在は10社ほどと連携し、仕向地ごとにニーズの高そうな車種を選別して掲載しているのですが、これが想像以上に売れています。月に200台ほど動く会社もあるほどです。
――共有在庫については、グッドバリューという新しいサービスも2023年にローンチされましたよね?
大畑 はい。これは、リース会社やディーラーなどが、ある程度まとまった台数を市場に出す前、例えばオークションに出す前の2週間ほどの期間、その車両を共有在庫に掲載してもらうという試みです。その際、通常の共有在庫ではなく、グッドバリューコーナーに出品していただくのです。これは、弊社が売買のマッチングプラットフォームを提供するのではなく、売買に関して委託していただくというのがポイント。車両は事前に引き取って弊社のヤードに置いておき、流通相場のプロである弊社スタッフがAIも活用して値付けをさせていただくものです。
藤崎 つまりこれは、在庫率が100%のワンプライス車両を、オークション相場と比較してもお得な適正価格で提供できるということ。通常の共有在庫は在庫率が75%程度ですから、4台に1台は購入できなかったのですが、グッドバリューならそんなことはありません。小売価格よりは安く、オークション価格よりは高い適正な値段で確実に売れる、買えるとなれば、売買双方のニーズを満たすことができます。しかも、リースアップ車や下取買取車がメインなので車両の鮮度が高く、ヤード保管車両なのでコスト計算が簡単というメリットもついてくるのです。
大畑 現在はまだ共有在庫約6万台のうち、グッドバリューは80〜100台程度の規模ですが、これを早々に1000台レベルに引き上げたい。そうすれば、国内市場向けの会員様だけでなく、輸出業者様も利用しやすくなるでしょう。
――年初にお話しいただいた、MOTA社との連携はその後どうなったのでしょう。
藤崎 MOTA社と連携した中古車リースサービスからは撤退させていただきました。ア
イデア自体はとても良かったのですが、ビジネスとして中長期で運営していくのには課題
がまだまだ多すぎるという経営判断です。
大畑 ただし、MOTA社が持つ、車買取査定ポータルサイトとしてのポテンシャルへの評価は何ら変わりません。「MOTA車買取」は、車の売却を検討する消費者の煩わしさを、少しでも軽減したいと生まれました。消費者から利用申込みがあると、高額の査定額をつけた上位3社の買取事業者様に限定して、消費者の連絡先を連携するという仕組み。この利用申込みが、2023年は10月の時点でなんと6万件を超えたのです。
藤崎 これは、見方を変えればMOTAが6万台の中古車両情報を持っているということ。今まではこの情報を売って手数料を得るビジネスが中心だったのですが、それだけではもったいない。弊社と協力すれば、CtoBオークションを確立できるのではないかという発想が
生まれたのです。つまり、オークネット上において、特徴がある提携オークション会場が一つ増えるというイメージです。
大畑 その会場には、消費者から直接仕入れた、いわゆる「フレッシュ玉」だけがずらりと並ぶわけです。そんな会場は他にありません。まずは週1000台ほどの規模を目指して調整中なのですが、一部の会員様に概要をお話ししたところ、非常に良い反応をいただきました。MOTA社が持つ集客力と、弊社が持つ業販のノウハウが合わされば、ものすごく大きなシナジーが生まれると期待しています。
――他にも、なにか新たなカスタマーサクセスについての施策はございますか?
藤崎 できれば2024年中にオークネオステーションの刷新を行いたいと考えています。皆様に日々ご利用いただいているオークネオステーションのシステムは、正直に申し上げてかなり古くなってしまいました。改善点が出るたびに、古いシステムの改修と継ぎ足しで対応してきた結果、会員の皆様に使いにくさを我慢していただいています。そこで、思い切ってシステムの新築に取り組むこととなったのです。
大畑 世の中にある使いやすいサイト、説明書などなくてもぱっと見て使い方が分かる優れたユーザーインターフェイスに生まれ変わります。
藤崎 おまとめサービスが、ほぼ全国の会場で使えるようになったのも、会員様にとってはうれしいニュースではないでしょうか。4輪仙台、4輪小山、4輪ベイサイド、バントラのアライ4会場に、JU山形とJU山口の計6会場が追加されたのに加え、9月からはウェブからおまとめサービスにお申し込みいただけるようにもしています。
大畑 同時に、支払期日を4営業日から6営業日に延長したのも会員様にとって大きなメリットでしょう。おまとめサービスをご利用いただければ、与信枠のご相談も柔軟に受け付けていますので、ぜひ積極的にご利用いただきたいですね。
藤崎 こうした情報は、毎週土曜日にお届けしているメルマガでもご確認いただけます。おかげさまで、今までも約40%という高い開封率を誇っておりますが、もっともっと多くの方にご覧いただきたい。AIシステムを活用した相場感といったオークション情報だけでなく、自動車流通研究所のレポートなど、参考になる情報が満載です。
――では、最後に2024年の展望と抱負をお聞かせください。
藤崎 2022年に会員様へのサービスの核となるテーマとして掲げた「カスタマーサクセス」を、2023年も推し進めてまいりました。2024年もこの流れを止めることなく、会員様により多くの成功体験を当たり前のように伴走できるようにしていかなければと考えております。
大畑 それには、お客様とフェイス・トゥ・フェイスで向き合う機会を増やしていくことも重要になるでしょう。以前は会員様を招いての海外旅行や情報交換会、サロン活動などを頻繁に開催していましたが、コロナ禍でこの伝統はすっかり途絶えてしまいました。テレワークは合理的な面もありますが、やはり最後は人と人が膝を突き合わせて会話し、意見を交換することが大切ではないでしょうか。会員様にもっとオークネットのことを知っていただき、私共も会員様ともっと深く関わっていくために、2024年は様々なリアルイベントを開催していきたいですね。
藤崎 もっと大局的な意味では、環境貢献に対しても積極的に関わっていきたいと考えています。中古車業界の根底はリユースですから、持続可能な環境づくりに大きく貢献していると言えます。ただ、それをアピールするのは難しいという現状があるのです。そこで、弊社では中古車を1台売ることで、二酸化炭素排出量をどれだけ軽減できたかを数値化するプログラムを開発しました。ここで算出した数値を、会員様にはマーケティング材料としてご活用いただきたい。ひいては、業界全体で循環型流通を構築していきたいですね。
オークマン2024年1月号掲載記事