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業界レポート1月号 Vol.50





オークネット会員の皆様、新年あけましておめでとうございます。

ちょうど節目となる50回目のレポートを新年号で迎えることができました。

これまで連載を続けてこれましたのも、偏に会員の皆様のサポートがあったからこそと衷心より厚く御礼を申し上げます。

今後も100回を目指し、会員の皆様方のご商売に役立つ情報を提供していたいと思いますのでどうぞ、引き続きご支援ご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。


執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡


 

▼目次


2024年 新車業界の展望


2024年 中古車流通の展望


2024年 中古車輸出の展望


 

1 自動車流通のトレンド

2024年新車業界の展望


 2023年新車関連事業は、生産、国内販売、輸出ともすべてV字回復を遂げました。しかしながら、健全性を示す指標、生産1000万台、国内販売500万台、輸出500万台に達することはできず、余力(受注残)を残して24年を迎えています。従って、今年はこの余力分の消化も含め、引き続き拡大が予想され、久々に指標に達するものと期待しています。ところが。。。

 今回はその市場展望をレポートしますが、昨年末にダイハツが発表した「ほぼ全車種の新車販売停止の方針」は、想定外のことで、この影響については、正直どれだけのハレーションが生じるか想像できません。それを前提にレポートしてみます。


【自動車生産】


 23年の自動車生産は22年実績の783万台から実に117万台も上積を図り、900万台弱の実績を挙げ、V字回復を遂げました。しかし再三述べているように、健全性を示す指標である1000万台には遠く及んでいません。国内販売における受注残は全メーカー含め、未だに100万台にも上ると言われています。今年はこの受注残が解消されると見込んでいました。

 またマクロ的な視点から言えば、23年の世界の自動車販売台数は前年比5%増の約8682万台と好調でしたが、それでも正常値であるパンデミック前の19年実績9178万台と比較すると500万台ほど届いていません。世界における日本車の割合は30%を占めます。この流れで行けば、当然、今年も世界需要は拡大します。すべての日本車が日本から輸出されているわけではありませんが、世界需要の拡大に比例して、確実に日本から新車輸出が拡大することは明らかです。  

 そこで24年自動車生産台数は、国内販売分が500万台に対して、新車輸出が480万台、合算して昨年から80万台増やし、若干指標には届きませんが、980万台程度かと、昨年、12月20日までは見込んでいました。しかしダイハツの不正問題によって、この見込みをどこまで下方修正する必要があるか、今後の動向を注視する必要があります。


自動車生産

980万台(国内販売500万台+新車輸出480万台)

新車販売

530万台(国内生産分500万台+輸入車30万台)

新車輸出

480万台(前年実績見込436万台+世界需要拡大分44万台)


【国内新車販売】


 本来であれば、24年新車販売台数の見込みは、これまでの受注残の消化分を含め、23年実績見込みの約480万台に対し、約10%増の530万台と想定していました。内訳としては、国内生産分が500万台で輸入車が30万台です。ところがダイハツの不正問題の発覚です。ちなみにトヨタとの共同開発やOEM(相手先ブランドによる受託生産)を除いた同社だけの23年11月までの累計販売実績は55万1591台もあります。これがそっくり消失してしまうものなのか。  

 現時点ではどのタイミングで販売が再開されるのかまったく予想がつかない状況です。同じトヨタグループ日野自動車の排出ガスの不正問題による工場停止期間を考えれば、長期化するのは避けられないのではと言う不安が生じます。


【新車輸出】


 24年の世界の新車販売台数はパンデミック前までの水準に回復し、前年を420万台程度増加させ、9100万台まで回復すると期待されます。先述したように、日本車の割合は30%で、国内生産率は35%です。そこから換算しますと昨年に対し、44万台ほど前年実績を上回り480万台になると想定しています。

 幸いと言うか、ダイハツは軽自動車中心であることから、輸出実績はさほど多くないため、新車輸出への影響は限定的であると考えています。今年は輸出に不利な円高㌦安に振れますが、それでも、国内販売で暗雲が漂い始めていますから、自動車メーカー各社は輸出を強化させていくものと思われます。



 

ここがPOINT!

 

 やっとコロナ禍の暗いトンネルを抜けて、昨年は余力を残しながらもV字回復を遂げ、今年は正常化に向け、更なる成長を期待していたところでしたが、今回の問題はまさに晴天の霹靂であります。ただ「逆境はチャンス」と捉え、ここは何とか乗り切っていきましょう。


 

2 中古車流通のあれこれ

2024年中古車流通の展望】


 2024年の中古車流通は、ダイハツの不正問題さえなければ、新車販売が引き続きプラス成長となり、中古車(下取車)の発生量が拡大すると見込んでいました。相場についても、国内中古車小売りは、せいぜい横ばいで、供給過多となり、下落傾向に突入しますが、中古車輸出が好調なことから暴落には至らず、総じて良好な展開を展望していました。正直なところ、中古車流通においても、今回の問題がどのような影響を及ぼすか、現時点ではまったく未知数であり、手探りの状態ですがレポートしてみます。


中古車登録・届け出台数はプラス成長から一転 横ばいか!?


 当初は今年、新車が昨年に対し、50万台ほど上乗せされると想定していましたから、中古車(下取車)発生量もそれに比例して増加し、24年通年での中古車登録・届け出台数は、前年比で6%増の680万台前後と見通しておりました。しかし、前項でも示した通り、ダイハツの年間での新車代替ユーザーと新卒者中心のエントリーユーザーの需要は60万台前後あります。エントリーユーザーには下取車は発生しませんが、代替ユーザーの多くは下取車が発生しますので、仮にこれがそっくり消失したとすれば、中古車発生量は激減し深刻な問題となります。

 ただ、現実の問題として、これらのユーザーが、同社の販売再開を待つことはほとんど考え難く、ほぼ他メーカー、ダイハツの場合、軽自動車中心なので、スズキやホンダに乗り換えするのではないでしょうか。従って、ダイハツ系ディーラーから下取車が発生することは皆無ですが、その分、ホンダ、スズキのディーラーからの発生量が増加するものと思われます。しかし、両メーカーともすべてを受け入れられるほどのキャパシティーはありませんし、順当にシフトするとも思えないので、その点を考慮して、24年通年での中古車登録・届け出台数は昨年から微増の650万台前後に落ち着くのではないかと見ています。



オークション実績は高水準を維持、高年式中古車(軽自動車)相場は2月以降高騰か!?


 24年のオークション実績についても、当初は15年振りの高水準となった昨年をさらに大きく上回ると予想していましたが、こちらも今回の問題によって覆りそうです。ただ、ディーラーオプションの遅れで目詰まり状態になっていた下取車が今年はオークションに多く出品されるようになりますので、前年実績の800万台前後はキープできるものと思われます。

 かなり覆るとすれば、高年式軽中古車の相場ではないでしょうか。前述したように、ダイハツ新車ユーザーの他メーカーへの新車乗り換えが加速しますが、乗り換えられなかったユーザーが、多く発生すると予想されます。それらのユーザーは新車を諦め、高年式の優良な中古車にシフトしてきます。それによって、特に軽自動車が人気の新卒需要が本格化する2月頃から、相場は一気に高騰するのではないでしょうか。ここ2年間、中古車相場は歴史的な高騰が続いていましたが、今年は供給量が増え、やっと下落傾向に向かうと考えていましたが、なにやら、ここで風向きが変わってきそうです。


 

●現時点でのダイハツ不正問題による中古車流通への影響


重要ポイント

年間60万台にも上るダイハツ新車ユーザーの動向

→スズキ&ホンダ&その他メーカーの小型車の新車への乗り換えが加速。

但し、納車が長期化が避けられないことから多くのユーザーは高年式で走行の少ないスズキ&ホンダ&その他メーカーの軽自動車&小型車で優良な中古車に需要がシフトしていく。


その結果

軽自動車に人気が高まる新卒需要が本格化する2月初旬から軽自動車の中古車相場が高騰する


 

 

ここがPOINT!

 

 ダイハツが記者会見を行った翌日(昨年12月21日)、国土交通省は異例の速さで同社本社に立ち入り検査を行いましたが、不正の全容解明に至るまで、相当な時間を費やすのではないかと思います。その間、中古車流通を含め自動車市場にどれだけのダメージが生じるか、今後の動向を注視する必要があります。


 

3 どうなってるの中古車輸出

【2024年中古車輸出の展望


 2023年の中古車輸出は記録的な成長を遂げました。今年24年もこの勢いにブレーキが掛かる気配はまったく感じられず、2年連続で歴史的な記録更新が期待できる一年になりそうです。そんな一年を改めて展望してみたいと思います。

※この項目はダイハツ不正問題の影響について、一切加味されていません


24年は中古車輸出に不利な円高㌦安に転じるも成長を妨げるまでには至らず】


 昨年、中古車輸出が歴史的な記録を残せた要因の一つとしては、円安㌦高にありました。その主な要因は、日本と米国の金利差が拡がったことです。両国とも、長らく金融緩和政策をとってきましたが、米国が22年3月に引き締めに転じたことで、金利差が拡がったことに起因しています。

 そこで、今年気になるのは、この傾向がいつまで続くかです。残念ながら、現在のところ、米国(FRB)が利上げを据え置き、今年から緩和(利下げ)をほのめかしていますから、例え日本(日銀)がゼロ金利を継続しても、これ以上金利差が拡がることは考え難く、基本的には輸出に不利な円高に振れると見ています。

 米国の利下げ幅を、年内で1%程度(3回の利下げの合計)と想定しますと、年末には130円~135円あたりで落ち着くとみています。

 その程度の円高であれば、次項で詳しく紹介していますが、今年、国内の中古車相場が下落するので、その下落分で十分吸収ができ、影響は受けないと言って良いでしょう。



24年国内中古車発生量は拡大、相場は下落傾向となり中古車輸出には追い風


 昨年は新車販売が回復に転じ、約480万台もの新車が販売されました。それによって、中古車(下取車)発生量も拡大し、オークションの出品台数は15年振りに800万台超えとなります。このように供給量が増えたことで中古車輸出には追い風となり、台数を押し上げることになりました。

 今年については、自動車メーカー各社がパンデミックで取りこぼした分を回収すべく挽回生産に転じると予想されることから、新車販売は引き続き好調さを維持すると思われます。24年通年では前年の10%増50万台近くを上積し530万台(輸入車30万台を含む)近くになると見込んでいます。そうなると、中古車発生量は昨年をさらに大きく上回りますが、国内の中古車小売需要はせいぜい横這い程度しか期待できないため、供給がかなり上回って、相場は昨年に対し、下落すると予想されます。

 市場としては相場の下落は歓迎すべきことではありませんが、中古車輸出にとっては、間違いなく追い風となります。前項で為替の問題を紹介しましたが、今年円高に振れたとしても、仕入価格がダウンするので、十分吸収ができ、さらに余りあるものがあります。



 

▶2024年中古車相場下落要因 (予想)

・2024年新車販売台数込 530万台(前年比110.4%)

・2024年オークション出品台数見込  850万台(前年比106.6%)

※この見込は、ダイハツの不正問題が発覚する以前に算出した数値です


 


【一転してコンテナ供給が拡大、輸送費も下落で、これも追い風に】


 いくら仕向国の需要が旺盛で、国内の中古車供給量が拡大しても、日本の場合、海上輸送で需要に応じた供給がないと中古車輸出は正常に機能しません。近年は、いち早くパンデミックからV字回復を果たした中国の輸出と、欧米各国の巣ごもり消費の増加によって、輸送量が増大し、世界的なコンテナ不足と海上輸送費の高騰が続いていました。しかし、一昨年9月頃から、一転してコンテナ供給が拡大し、輸送費も下落しています。これは、米中の貿易摩擦の影響で荷動き量が減速、さらに世界のコンテナ生産量の9割以上を占める中国が、一時コンテナ生産量を減少させていましたが、近年需要が急拡大したことによって、再び増産に転換、しかし、これが供給過多となり、市場にコンテナが溢れ、結果的にこれが昨年中古車輸出を押し上げた要因となっています。

 今年については、新造船の竣工も相次いで予定されているなど、価格の下落は今後も進みます。このように今年は海上輸送費の下落とコンテナの供給の拡大により、中古車輸出が昨年を上回る需要があっても、それを吸収するだけの十分なキャパシティーを備えています。


近年のROROとコンテナによる中古車輸出台数の推移


出所:ECLエージェンシー㈱経営企画室

 

ここがPOINT!

 

 今年はロシアが唯一マイナス成長となりますが、それでも非規制対象車を中心に年間15万台は見込めます。また昨年マイナス成長となったマレーシア、バングラデシュ、フィリピンの3ケ国もプラスに転じることが予想され、ロシア以外にマイナス成長となる国がまったく見当たりません。

 具体的な数値を挙げるとするならば、23年の実績がまだ発表はされていませんが、凡そ145万台として、その10%アップの160万台を最低ラインとして、それ以上が期待されます。

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